“勝つ”とはなんだろう。
大会や賞レースで1位を取る。
要は誰がどう見ても最上位であること。
“勝つ”ことに意味がある。
僕は初めはそう思っていた。
中学2年から陸上競技を始めて県大会、関東大会、全国大会、アジア大会、世界大会に出場してきた。
でも、一度も1位を取ったことがない。
自分が思う“勝つ”ことをしたことがない。
個人競技の陸上競技。もちろんリレーもあるが、基本的には1人で戦う。
僕は、どうやら1人で戦うことが苦手みたい。
何が日本代表になっただ。メダリスト?一度も勝ったことない。こんなの誇れない。
どこかで勝たないと。なんの意味もない。なんの価値もない。
そんな事を思っていた。
つくづく僕はプライドが高いと思う・・・。
2020年9月、練習中にアキレス腱を断裂した。
そこから多くの人に協力頂いたのにも関わらず、競技復帰を果たすことはできなかった。
自分から陸上競技がなくなったら何も残らない。
自分の無力さを感じ、今後の人生に迷った。
毎日が恐ろしく、誰か僕に正解を教えてくれ・・・とまで思っていた。
そんな時、新しい可能性を見せてくれる人に出会い、自分の価値を体感させてくれる場を与えてくださった。
人間何もない人なんていない。
勇気を出して一歩踏み出せば、たくさんの世界が見えて自分の価値を認識できる。
挑戦し続ける、成長し続ける重要性を感じた。
そんな時、これまでこだわっていた“勝つ”ことについて改めて考えた。
“勝つ”必要はあるのか?と。
もちろん勝負の世界だし、勝った時の喜びや返ってくるものは大きい。
でも、勝つよりも“その道に挑戦し続けること”の方が重要じゃないかと。
僕はこう思うようになっていた。
挑戦すると、悩むし、くよくよしてしまうことだってある。
でも、困った時は誰かに頼る。
じゃないと自分が保てない。
競技から離れて約2年。
僕はアスリートとして就職した企業に残り、社業に専念している。
一人で、自分のために戦ってきた自分が、大きな組織の中で、誰かのためを思って日々朝から晩まで働いている。きついが、その分やりがいもある。
よく愛されキャラなんて言ってもらうこともあるが、根っからの人見知り。
会話が弾む本とか読みまくった。日々挑戦だ。
2023年11月3日。今日は僕の29歳の誕生日。
この2年、陸上選手として正式に引退宣言はしていなかったが、この節目に言いたい。
2023年11月2日をもって、僕は陸上競技選手を引退する。
勝てなかったが、良い陸上人生だったとは思う。
支えて下さったすべての方への感謝と、競技を離れてもがきながらも頑張ってこれた経験を胸に、今日からまた頑張っていこうと思う。
今後も陸上競技には関わり続けたい。
日々、色んな事を体験して、勉強して、陸上競技を通して僕だから伝えられる何かを、誰かのために伝えていきたいと思う。
2023年11月3日 谷口 耕太郎
アイキャッチ画像は日本陸上競技連盟HPより引用させて頂きました。